Aさんは90歳で、現在も独り暮らしをしています。幸いにも認知症はなく、自分の家のことは全て自分で管理できるため、介護の評価では要支援1とされました。若いころから彼女は黒髪にこだわり、いつも整髪してきましたが、最近は美容院に行くのが難しくなり、自分でする整髪にも限界を感じるようになっていました。
とはいえ、独り暮らしで外出の必要もないため、前髪や横の髪が伸びてきて煩わしく感じ、自分でハサミを使って適当に切っていました。しかし、最近になって、ひ孫の端午の節句を祝うために家族全員が帰郷することになりました。
Aさんの家では男の子の節目の行事は家族全員で行う習慣がありましたが、Aさんは自分のことはできても家族が揃うと手間がかかることと、億劫なことから、「もう自分のことは構わないでほしい」と言っています。しかし、本当は孫やひ孫に会いたいという気持ちも抱えていたのでしょう。
ある日、新聞の折り込みチラシで「車いすやベッドで暮らす人のために、自宅で美容サービスを提供します!」という訪問美容の広告を見つけました。興味津々ではありましたが、子供たちから「チラシやテレビで宣伝されているものは詐欺の可能性もあるから、自分で電話をかけないように」と言われていました。
Aさんは家族に尋ねるのは恥ずかしいと感じ、ケアマネージャーに「介護の一環としてカットをしてもらえるか?」と相談しました。ケアマネージャーは端午の節句に合わせて訪問美容を予約し、Aさんの希望通りに自宅でカットとカラーをしてもらいました。
節句の日には、Aさんは喜んで孫やひ孫に会い、シルバーカーを押しながら一緒に神社に行き、思い出の写真も撮りました。Aさんの尊厳が守られ、今後は3ヶ月に1回のペースで訪問美容を受けることになりました。
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